Edge Of The Knife






       一秒だって
       離れているのが
       辛くて
       せつなくて
       別れた あの夏 ――






どこか気怠い声の男の歌で、俺は目覚めた。
ラジオから、ふいに流れ出した古い歌。


夕べは珍しく一人寝で、目覚まし代わりにラジオのタイマーをセットしておいた。
今日は、決まった時刻に決まった場所に行かなければならないというのに、そういう時に限って目覚まし代わりの女が掴まらないんだから、皮肉な話だ。

ラジオから流れてくる男の声以上に気怠い気分で、俺は身体をベッドの上に起こした。

不要なものは何もない、だだっ広い部屋が、いつも通りにそこにある。
昼近い時刻の初夏の陽光が床に反射して、眩しい。
夕べ、俺は、ブラインドも下ろさずに寝てしまったらしかった。





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