瞬は、鈍重な牛の横にいる俺を見て、目をみはった。

「あ、さっき話した、ここのディスプレイをしてくれた奴が来てくれたんです」
「女性にモテる空間デザイナーさん?」
「はい〜」

画家は、瞬の前で、鼻の下を伸ばしている。

「そう……」

瞬が、じっと、俺を見詰めている。
俺は、視線を逸らせなかった。


「瞬……」
なんとか掠れた声を絞り出す。


「な……なんだ、氷河、おまえの知り合いか? もしかして、おまえが呼んでくれた客か?」
「いいえ、僕がここに来たのは、偶然ですよ。彼に会うのも5年ぶり」

俺の代わりに瞬が、画家に答える。

そうだ、5年。
5年が経っている。


俺が、瞬を捨ててから。
瞬の許を逃げ出してから――。





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