白い花に包まれた瞬。

俺は不思議なものを見るような気分で、その美しい光景に見入っていた。


瞬は少し大人びていた。
細いのは昔のままだったが、しっとりと落ち着いた雰囲気を身に備えて――綺麗になっていた。

もう、俺の気紛れに振り回されていた頃の瞬じゃない――んだろう。

抱きしめた次の瞬間には乱暴に突き離し、放っておいたかと思うと、側を離れることを許さずに縛りつけるような、俺の言葉に、一挙手一投足に、戸惑い、傷付き、泣いてばかりいた瞬。

あの頃のすがるような眼差しを思い起こさせるものは、今、俺の前にいる瞬には、かけらもない。


俺だけのものにしきれない苛立ち。
俺だけのものにならないのなら要らないと無理に思い込み、俺は瞬の前から姿を消した。



――俺は、瞬を好きになりすぎていたんだ。
自分を見失うのが恐くて、瞬を失うのが恐くて、その苛立ちで瞬を傷付ける日々が辛くて、このままでは瞬を――瞬の心を殺してしまうと思った。


だから。



       一秒だって
       離れているのが
       辛くて
       せつなくて
       別れた あの夏




ふいに、あの古い歌の歌詞が蘇る。
あの歌は、瞬に出会う予兆だったのかもしれない。



瞬は、落ち着いた表情と仕草で、
「変わらないね、氷河」
と、やわらかい微笑を俺に向けてきた。


俺以外の誰かに愛されて、満ち足りているのだと――わかった。





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