俺と瞬は、随分長いこと、口を開かなかった。

訊きたいことはたくさんあった。
だが、それらはみんな、聞くのが恐いことでもあって――。

しかし、長い沈黙に耐えるのには限界がある。
俺は、意を決して、瞬に尋ねた。

「どうしてたんだ、この5年間」
「別に……。氷河が知ってる頃と同じ」
「……嘘をつけ」

同じなはずがない。
実際、今、俺の前にいる瞬は、あの頃とはまるで様子が違っていた。

「嘘?」
「…………」

再び長い沈黙を置いてから、俺は、できるなら知らずに済ませたいことを言葉にせざるを得なくなった。

「好きな奴、いるんだろ」

そういう意味かと得心したらしく、瞬が小さく頷く。
「――うん」

「俺よりいい男か」
「どうして男なの」
「見ればわかる」
「……見れば?」
「愛されて、綺麗になったようにしか見えない」

馬鹿な話だ。
確信していながら、それでも、俺は瞬の否定を期待していた。

瞬は、俺の期待に応えてはくれなかったが。

「とても優しく、ね」
瞬は、はにかむように微笑して、そう告げた。

俺は――ショックを受けるより、身体が熱くなった。
俺以外の誰かが瞬を抱いている――という事実が、俺の身体の血を逆流させた。





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