「氷河、駄目だってば! 誰か来たらどうするのっ」
「星矢は星の子学園に行った」
「紫龍は出掛けてないよ……!」
「奴はオトナだから、何を見たって、見なかった振りをしてくれるさ」

氷河は最初から、その場を自分に目撃させるために、昼日中からその狼藉に及んだのだと、紫龍はすぐに察した。

普段滅多に使われていないとはいえ、城戸邸に起居している青銅聖闘士たちのそれぞれの部屋からラウンジに向かう途中にある客間──しかも、ドアが開け放たれている──で。



「氷河……ああ……っ!」

濃紺のビロード張りの長椅子の下に、瞬の服が打ち捨てられている。

陽光の溜まりの中で、瞬は全裸にされていた。
氷河はほぼ着衣のまま、前だけをはだけて、不自然なほどに身体を折り曲げられている瞬にのしかかっている。

客間から、氷河の横暴を拒む言葉はすぐに消え、氷河の律動に合わせて、瞬の唇からは喘ぎ声が洩れ始めていた。


それは、夢に見た光景よりずっと生々しく扇情的で、白い喉をのけぞらせるようにして身体を揺さぶられている瞬の横顔は凄艶そのものだった。 
瞬の肌と氷河の肌が触れ合う音と、交わる音がする。


紫龍には、それは、夢以上の悪夢に思われた。



ふいに、瞬を攻めていた氷河の動きが止まる。

瞬が、堅く閉じていた瞼をゆっくりと開け、未だ満ち足りていないらしい身体の戸惑いを、言葉ではないもので氷河に訴える。

「気持ちいいんだろう?」
戸惑いごときでは収まらない荒い息に肩を上下させている瞬を見おろし、氷河は、そんな瞬を揶揄するように尋ねた。
無論、瞬は返事どころではない。

「気持ちいいなら、ちゃんとそう言え。でないと、続きはしてやらない」
「あ……え?」
「一言だけだ。俺にこうされるのが気持ちいいと正直に言ってみろ」
「氷河……っ!」

しばらくの間、瞬は自分が何を要求されているのか、理解しかねていたらしい。
氷河の下で、辛そうな息を洩らし続けていた瞬は、だが、やがて、蚊の鳴くような声で、氷河の望む言葉を口にした。

「よく言えたな」
氷河が満足そうに薄く笑って、約束のものを瞬に与えはじめる。

途端に、瞬の喘ぎ声が激しく高くなり、それは苦悶にも似た喜悦を訴えるうわ言へと変化していった。






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