瞼がひどく重かった。 目を開けた時、そこが見慣れた自分の部屋で、氷河が、 『悪い夢でもご覧になっていたのですか』 と笑って尋ねてくれればいいと、瞬は思った。 実際に瞬が瞼を開けた時、そこは見知らぬ部屋で、瞬を哀れむような、それでいてどこかに憎悪の光をも宿した眼差しで瞬を見詰めていたのは、氷河ではなくハーデスだったが。 「僕は――何をされたの」 悪夢は現実だった。 が、その悪夢の意味するところが、瞬にはわからなかった。 ただ、それが悪い夢――現実――だということだけが、おぼろげにわかるだけだった。 「何も」 ハーデスが、感情のすべてを押し殺したような声で答える。 「何も……君は変わっていない」 「…………」 では、変わったのだ。 何かが。 だが、何が、なのだろう。 |