見知らぬ部屋に瞬をひとり残して姿を消したハーデスが、瞬の許に戻ってきたのは、夜になってからだった。

「おいで。牢の官吏に金を掴ませた。短い時間なら見て見ぬ振りをする」

王の寵臣であるハーデスが、王位継承権を巡るライバルに対して何を考えて、この親切なのかが、瞬にはわからなかった。
だが、今の瞬には、彼しか頼れる者がいなかった。

それ以上に、今の瞬には、氷河に会うことしか考えられなかった。






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