手に入ると思った途端に、なぜか氷河の中には、ためらいが生まれてきていた。 この時をずっと待っていた。 だが、そんな時は永遠にこないとも思っていた。 瞬の部屋の寝台に瞬を座らせ、その前に立ち、氷河はしばし無言で、小さく幼い彼の主人を見詰めていた。 「氷河……?」 瞬が、氷河の険しい眼差しを不安げに見上げてくる。 本当にいいのだろうかと思うと、身体が冷めていく。 やはり駄目だと思うと、身体が熱くなる。 心と身体に、そんな矛盾を感じるのは、氷河にはこれが初めての体験だった。 「氷河、僕、どうすればいいの?」 王やハーデスとは全く違うことをするのだと思っているのか、瞬は、自分がどうすればいいのかわからずにいるようだった。 「あ……」 喉が渇いているのがわかった。 「瞬様は、何もなさらなくても結構です。私がすべてをいたしますから」 まだ、僅かばかりの迷いに捉われつつ、瞬の不安を取り除くためだけに、氷河は瞬にそう告げた。 ほっと安堵の息を洩らした瞬をその場に立たせ、服に手をかける。 瞬は大人しくしていた。 瞬の身に着けているものを全て取り払い、瞬に羞恥を覚える間を与えずに、裸身を抱き上げて寝台に横にする。 瞬の身体にはもう、悪夢の跡は何も残っていなかった。 それは、白く繊細で細い。 悪夢の跡が残っていたら、それを消してやろうという激情が湧いてきていたかもしれない。 だが、瞬の肌は、誰の目にもさらされたことのない処女雪のようで、氷河は、それを、不思議なものを見るように凝視せずにはいられなかった。 |