「しゅ……瞬様、どうされたのです !? 」
身体の感覚のほとんどを性感に支配されているはずの瞬の突然の嗚咽に、氷河は狼狽した。

「だって、氷河が……」
「私が?」
喉の奥に涙を押しやろうとしている瞬の身体を、氷河は抱き起こした。

身体は氷河に為されるがままで、だが、瞬は切なげに氷河を責め始めた。
「氷河が意地悪する……。僕に教えてくれるって言ったのに……!」
「意地悪だなどと、私が瞬様にそのようなことをするはずが――」
「氷河が意地悪する」

瞬には、氷河の葛藤も、ただのいじめっ子の仕業でしかないらしい。

王位継承者選定の場での幼いながらも堂々とした態度は、今の瞬からは想像もできない。
瞬は氷河の“いじめ”に、すっかりしおれてしまっていた。


「――そんなことはいたしません。ただ、私は……」
これでは、観念するしかない。
瞬は、質が悪いほどに可愛すぎた。

「……瞬様は、私にどうして欲しいのです」
なだめるように問われた瞬は、しゃくりあげながら、氷河にしてほしいことを、途切れ途切れに訴え始めた。

「僕は」
「はい」
「僕は、氷河に抱きしめてもらって、キスしてもらって、それから――」
「それから?」
「身体に触ってもらって、それで……」
「それで?」

その先まではわからないらしい。
瞬は、やわらかい髪を焦れるように左右に揺らした。

「──氷河なら、言わなくてもわかってくれるんだと思っていたのに……!」
「お泣きにならないでください、瞬様」
「だって、氷河が……」


「瞬様……」
他に仕様がないではないか。
瞬は可愛らしい。
抱きしめずにはいられなかった。

「もちろん、おっしゃらなくてもわかっております」
「だったら……!」
瞬が、ふいに、氷河にしがみついてくる。


そこが、氷河の限界だった。






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