「会いたくない?」 沙織に瞬からの伝言を伝えられた瞬の仲間たちは、みな一様に驚いた。 “一様に”というのは正確な表現ではないかもしれない。 「瞬がそう言っているのか」 氷河の声には、意外の感の他に、星矢たちのそれにはない苛立ちが含まれていた。 「最近は、病室に医師を入れるのも嫌がってるの。まるで、人に会うこと自体を怖れているように見えるわ」 地上を覆っていたハーデスの影が消えてから半月。 アテナの聖闘士の中でいちばん重傷だった星矢ですら、既に医療センターの病室では暮らしていない。 だというのに、いつまでも瞬だけが面会謝絶状態でいることに、氷河は懸念を覚えていた。 会えない日が長く続くと、懸念はやがて苛立ちへと変化する。 瞬は――少なくとも、瞬の身体は――回復しているはずだった。 もし、ハーデスとの闘いが、瞬の心に大きな傷を残したというのなら、その傷を癒せるのは瞬の仲間たちだけのはずである。 瞬の仲間たちの中に、瞬を責めるような輩は存在しない。 それは瞬にもわかっているはずだった。 わかっていながら、仲間たちと会うことを拒む瞬。 氷河の苛立ちは、そろそろ限界に達しようとしていた。 |