何よりも、誰よりも、瞬は、氷河に会うのが恐かった。

あの裏表のなさそうな星矢でさえ、言葉と思考はほとんど別物なのである。
愚かな敵を罵倒する時にはまるで遠慮がなが、普段はどちらかといえば寡黙な氷河が、あの海の色の瞳の奥で何を考えているのかを“聞く”ことが、瞬は恐ろしくてならなかった。

だが、いつまでも会わずにいられるものでもない。
いつまでも、この白い部屋に閉じこもっていることが許されるはずがない。

瞬は、暖かく安全な母親の胎内から広い世界に生まれ出る子供のように決死の覚悟で、仲間たちに会う意思を沙織に伝えた。






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