身仕舞いを整えた氷河は、瞬の枕元に――それは氷河のベッドだったが――椅子を引いてきて、その椅子に腰をおろし、瞬に向き合った。
さすがに裸で話し合うようなことではないと察したのか、形ばかりではあったが、瞬の肩を白いシャツブラウスで覆う。

「読める? 人の考えてることが?」
(馬鹿な)

瞬の言葉を、氷河はすぐには信じようとはしなかった。
当然のことではあるが。

「読めるよ。何か考えてみて」

(急に何か考えろと言われても)
「いいから、何か考えて!」

瞬の真剣な眼差しに、氷河も、少しばかり真顔になる。

(ふざけているようには見えないが……)
「うん、僕、ふざけてなんかいないよ」

「…………」
声に出さなかった考えに答えを返されてた氷河が、しばし言葉を失う。
それから、彼は、やっと瞬の要求に応えてくれた。

(1+1は)
「2! もう少し、マトモなことを考えてよ」

(2+2は)
「氷河っ、ふざけてないでっ !! 」


瞬に怒鳴りつけられて、氷河はやっと、瞬の言葉を事実と認めることができたようだった。

――認めざるを得なくなったようだった。






【next】