これは本当に夢なのだろうか。 本物の自分は、今、たったひとりで、寝台に横たわっているのだろうか。 瞬には、到底そんなことは信じられなかった。 「氷河……!」 氷河がそこにいることを確かめるために、瞬は両の腕を虚空に向けて伸ばしてみた。 それは、確かに氷河の腕に触れ、瞬を安心させてくれた。 それまでは寝台に横たわった瞬の脇に座り、瞬の身体を変化させることに専心しているようだった氷河の身体が、今は瞬の正面にある。 「ひょう……が……」 一人きりで夢の世界に取り残されているのではないことに安堵して、瞬は氷河の名を呼んだ。 それに応えるように、氷河の唇が瞬の唇の上におりてくる。 瞬の唇に触れながら、氷河はまるで幼い子供をなだめるように、やわらかい声音で瞬に囁いた。 「狭すぎる……が、瞬、これは夢だから、我慢できる、な?」 瞬が怖れているのは、このまま目覚めてしまうことだけだった。 そうならないためになら、今の瞬に耐えられないことなどなかった。 それ以外の何を、氷河は我慢しろと言っているのだろう――? 瞬は、氷河の言葉の意味を深く考えもせずに、彼に頷き返した。 途端に、瞬の中に、氷河の指でも舌でもないものが入り込んでくる。 「……っ !! 」 瞬は、息をすることもできずに、声のない悲鳴をあげた。 何が自分の中に入り込んでいるのかがわからない。 ただ、それは、何かひどく大きくて恐いものだということだけは、瞬にも感じとれた。 そして、瞬はそれから逃げようとした。 氷河が、その瞬の身体を抱き起こして、繋がったまま、瞬を自分の上に座らせてしまう。 氷河の両手は固く瞬の腰を掴んでいて、瞬は逃れることはできなかった。 「や……っ、氷河……!」 「痛いのか? 夢なのに?」 「痛い……あっ……ああ……っ!」 「辛いのか? こうされると?」 瞬を固く抱きしめたまま、氷河が、瞬の中に入り込んでいるものを、更に奥へと突き上げてくる。 瞬は、悲鳴をあげて、上体をのけぞらせ、氷河の腕の中から逃れようとした。 だが、瞬を抱きしめている氷河の腕は、瞬にそうすることを許さず、瞬は氷河の腕の力に逆らえなかった。 瞬が自分の身体の内で、氷河に逆らわせることができるのは、ただ涙だけだった。 「泣くな。ただの夢だ」 「う……」 そして、涙は、瞬の意思でもどうすることもできなかった。 氷河が、これまで瞬に優しい言葉をかけ、抱きしめ、そして恋を語ってくれたのは、こんなことをするためだったのだろうか。 そんなはずはないと思おうとする瞬の思考を妨げるものは、他ならぬ氷河の暴力だった。 少し痛みが薄らいだと思うたびに、氷河は新しい痛みを瞬の中に送り込んでくる。 氷河はやはり異国の人間で、その力を頼み、他国を侵略するために、やってきた野蛮人なのかもしれない。 身体の痛みを凌駕するほどの痛みを胸に覚えて、瞬は切なく身悶えた。 |