──夢。 それは、もちろん、夢だった。 ただの夢。 キアラに僕をどうこうできるはずがない。 キアラは、今は生きていない。 そして、僕は、そんな実在しないものに負けてしまうほど弱くない。 『僕の氷河を苦しめて……!』 あれはどういう意味だったんだろう。 キアラの偽者を抱いて悦んでいる自分に氷河が苦しんでいるとでも、キアラは言いたかったんだろうか? 氷河が苦しんでるって、でも、それは、キアラが勝手にそう思い込んでいるだけ。 そう思っていたいだけ。 氷河はこんなに悦んでるじゃない。 僕を抱いて、僕を自由にして、いつも僕の肉に噛みつき、噛み切るように、僕を食いあさって。 自分の飢えと渇きを満たすために、僕のことなんか考えもせず。 氷河がそんなふうなのは、キアラが氷河を受け入れてやらなかったからだ。 自分ひとり綺麗な人間のままでいて、氷河を苦しめ続けてきたのはキアラだし、今苦しんでいるのは、氷河じゃなくて、この僕だ。 僕は、苦しかった。 どんなに氷河に求められても、苦しかった。 |