西はフランス,南はスイスに国境を接する南ドイツにある黒い森──シュヴァルツヴァルト。
南北に160キロメートル、東西に30〜50キロメートルの広さを持つ、ドイツで最も広い森林地帯である。

さすがに、グリム童話に登場するような深い森は減ってきているが、昨今の自然保護運動のせいもあって、中世そのままの姿を残した森も、あるところにはある。
シャイナから伝えられた情報を元に、青銅聖闘士たちが向かったのは、シュヴァルツヴァルトの内でもかなり北寄りの、ほぼ昔のままの森の姿を残した地域だった。
ドイツ連邦に併合される以前のバイエルン王国時代からずっと、ハインシュタインという一族が治めていた地方である。

ほとんど観光地化されていないハインシュタイン旧領には、かつての当主の居城と砦を兼ねた城館が幾つか残っていて、今は誰も住んでいないはずのそれらの建物に、何者かが出入りしているらしい──というのが、聖域のシャイナからもたらされた最新の情報だった。

観光客でひしめくバーデン・バーデンからハインシュタイン旧領へ。
問題の場所に近付くにつれ、瞬たちは、嫌な気持ち・・・・・を強く感じるようになっていった。





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