確かに、その“敵”たちは、聖闘士の敵にはなりえないほど手応えのない“敵”だった。 いったい誰が、何を考えて、こんなにも脆弱な敵をアテナの聖闘士に差し向けたのかと、瞬の作り出す空気の渦に守られて、敵への手出しもできずにいる星矢たちは思っていた。 否、やはり、その“誰か”には、この結界に影響を及ぼされない聖闘士がいることが計算外だったのだろう──。 「瞬、そいつらが人語を解するかどうかは 「え? あ、そうか」 紫龍の忠告のおかげで、瞬は、非常に重要なことを思い出すことができた。 瞬たちは、ここに敵を倒しに来たのではなかったのである。 が、その時には瞬は、敵の最後の一人の延髄に──“敵”が人間と同じ身体を持っているのなら──拳を打ちおろしてしまっていた。 瞬は慌てて、その敵が地に伏す前に手で捕まえようとしたのだが、“敵”の身体は瞬の手を擦り抜け大地に音もなく倒れると、すぐに塵のように消えてしまっていた。 「あ、どうしよう……」 「あーあ、やっちまった」 ネビュラストリームのバリアの中から、星矢が、仲間の先走りに気の抜けた声を漏らす。 せっかく向こうから出向いてきてくれた手掛かりを自分の手で消し去ってしまったことに、瞬が意気消沈しつつ反省しかけた時、 「あ、まだ、いる!」 それまで瞬たちの視界に入っていなかった別の“敵”が、黒い森を作っている樹木の陰から姿を現した。 瞬は嬉々として新たな敵に向き直った──のだが。 その男の力は、 |