「……っ!」 瞬は、掠れた悲鳴を漏らすのが精一杯だった。 他には何もできない。 瞬は、壊れた人形のように、サガに操られることしかできなかった。 「あの薬は、四肢の自由は奪うが、感覚までは奪わない。そんなに泣いてばかりいては、いいのか悪いのかわからないじゃないか。どっちなんだ」 下卑た口調で瞬を揶揄するサガに、だが、泣くこと以外、今の瞬にできる抗議はなかった。 「い……た……い……」 言葉というより音を、瞬は必死に吐き出した。 「痛いのか? それなら、私をキグナスだと思ってしまえばいい。そうすれば痛くなくなる」 (そ……んなこと……!) できるわけがないと叫ぶことができたら、どんなにいいだろう。 悲鳴をあげることもできない瞬を、サガが乱暴に突き上げてくる。 そうしながら、彼は、侮蔑の言葉を吐き続けた。 「こんな痛みは嫌だろう? おまえのように 「ひょう……が?」 「そうだ。そう思ってしまえば──痛くないだろう、 (あああああ……っ!) サガの言う通りだった。 そんなことをしていいはずがないことはわかっていた。 氷河でない人間を氷河と思うことなど。 だが、瞬は、サガに陵辱されているうちに思い出してしまったのである。 氷河と身体を交えることが、どれほど心地良く、どれほど幸福な歓喜をもたらしてくれるものだったか。 痛みを痛みと感じることさえできない、あの感覚。 このまま死んでしまっても構わないと思わせてくれるほどの、圧倒的な力──。 今、自分を抱きしめている男の腕、髪、唇、自分の中に入り込んでいるそれを、氷河のものだと思ってしまえば、この痛みと屈辱がすぐに快感に変じることを、瞬は知っていた。 要するに、セックスとはそういうものなのだ。 行為自体は、相手が誰でも大差はない。 (氷河……) 生きている瞬なら、そんな誘惑に屈することはしなかった。 だが、今の瞬は、心弱くなっていた。 「ああ……ん、ああ……!」 自分が、もう氷河と同じ世界には生きていないという事実に打ちのめされて。 (氷河……氷河……あああっ!) |