「ここに」
指を、シュンの中に忍び込ませる。
「ここに俺が入っていく」
「んっ……」
「おそらく、おまえはかなり痛い思いをする。大丈夫か」
「だ……だいじょう……ああっ」

指1本で、シュンはカーテンの向こう側にいる貴族たちのことを忘れてくれた――らしい。
シュンは初めて体験する異様な感覚に戸惑ったように、膝に力を入れ両脚をぴたりと閉じた。
それが自分が耐えなければならない苦痛なのだと、シュンは思ったらしい。
僅かに安堵したような笑みを浮かべ、シュンは小さく頷いた。
「大丈夫。これくらい平気だよ、だいじょうぶ……」
指を2本にする。
シュンの眉は少し歪んだ。

「だ……だいじょうぶだよ――」
これから彼が味わうことになる本当の痛みを知らずに健気に答えるシュンを、ヒョウガはもう見ていられなかったのである。
子供を愛撫するように脚を撫で、胸を撫で、頬を撫で、シュンが痛くもなければつらくもない感触に安堵の表情を浮かべるのを確かめてから、ヒョウガは、二人の唇と舌を使って子供にするのではないキスをシュンの中に送り込んだ。
キスになら恐れを感じずにいられるシュンの瞳が、ぼんやりと潤み始める。

「なるべく早く終わらせる。我慢してくれ」
そう告げてヒョウガは、シュンがその言葉に頷く前に、シュンの腰を抱えあげ、その脚を大きく左右に開かせた。
「ヒョウガ、なにを……」
シュンは、自分がどういうことをされるのかはわかっていたらしいが、そのためにそんな格好をさせられる必要があることには思い至っていなかったらしい。
途端に、シュンは頬を朱の色に染めた。
「ヒョウガ、どうしてこんな……ひ……っ!」

ヒョウガがシュンの中に入り込むや、シュンは息を止めて全身を強張らせることになった。
「あああああっ!」
シュンは声を抑えることさえ忘れてしまっているようだった。
身体を引き裂くような痛みが、シュンにそうすることの必要性を忘れさせてしまったらしい。
なるべくシュンの身体を傷付けることのないように、ヒョウガは少しずつ身を進めたのだが、シュンは懸命にその身を引いて、我が身に加えられる無体な力から逃れようとする。

さほど広くはない寝台の上で、シュンが逃げられる場所には限りがあった。
それはわかっていたのだが、シュンがその場所に至る前に、ヒョウガはシュンの腰を強く押さえ込んだ。
そして、シュンの中に更に侵入する。
「あ……あ……痛い、痛い、いや、ヒョウガやめて、助けてっ!」
我慢できる程度の痛みと思って油断していたところに、そんな乱暴な振舞いをされ、シュンは完全に動転してした。
「いたい、ああ駄目、痛い、ヒョウガっ」

シュンがヒョウガに向かって叫ぶことができたのは、そこに二人以外の誰かがいることを忘れてしまえていたからだったろう。
ヒョウガはいっそ、もっと無体なことをしてシュンを泣き叫ばせておいた方がシュンのためなのではないかとさえ思ったのである。
だが――。

「これはまた」
「女より大変なようですな」
「それはそうでしょう。これは神の定めた自然に逆らう行為。しかもあの細い身体で、全くの初めてで」 
「レッジョ公の王子はまた随分と立派なものをお持ちのようですし」
証人たちの声が全くひそめられていないのは、自分たちが何を言っても、その声はシュンの悲鳴にかき消されてしまうものと彼等が考えたからだったろう。
そして、彼等の遠慮のない“感想”は、シュンにも聞こえてしまったらしい。

「ヒョウガ……痛い……」
シュンの声は、蚊が鳴くように小さくなった。
浅ましい姿で、慎みのない声をあげ、他人の物笑いの種になっている自分が哀しくなって、シュンの瞳からは涙がにじみ流れ始めていた。
「シュン、我慢してくれ。愛してるから」
「ぼく……ヒョウガ、でも僕もう……」
シュンは声を抑えることさえ つらそうで、そして、その涙を止めることも無理なことのようだった。

ヒョウガは、できればやめてやりたかったのである。
シュンがそれほど つらいのなら。
だが、彼はそうすることができなかった。
シュンの中が あまりに心地良くて。






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