「しししししししししりゅ〜〜〜〜〜っっっっっ!!!!!!!!!!!」 絹を引き裂くような――もとい、ダイヤモンドを打ち砕くような――氷河の悲鳴が城戸邸ラウンジ内に響き渡ったのは、ある暑い夏の日の午後だった。 「ききききききききき貴様、俺の瞬にいったい何をしたんだ〜〜〜〜っっっっっっ!!!!!!?????」 と絶叫する氷河の辞書を今調べたら、そこに『平常心』という単語が載っていないことは、生後一週間の赤ん坊にも容易に推察できたことだろう。 氷河は、『生まれてこの方、これほど取り乱した経験は一度もない!』と自ら断言できるほどに取り乱していた。取り乱しまくっていた。 原因は、瞬から手渡された一枚の写真(↓)――である。 ![]() なんということだろう。 この世界に、こんなことが起こっていいのだろうか。 この世の中に、こんな悪夢のような写真が存在することが許されるのだろうか。 神が許し、仏が許し、世界中のすべての人が許しても、氷河には許すことができなかった。 裸なのである。 服を着けていないのである。 服を着けていない瞬が、同じく服をつけていない男と絡んでいる写真。 しかも、瞬と一緒に写っているのが自分でない男――となったら、氷河に冷静でいることを求める方が間違っている――と、これは神も仏も至極当然と認める事実ではあろう。 それでなくても、 「綺麗に撮れてるでしょ? これまで何冊も写真集を出してる有名なプロのカメラマンの人が撮ってくれたんだよ。写真写りいいねって、僕、すっごく褒められちゃった♪」 にこにこしながらそう言って、問題の写真を氷河に手渡してきた瞬は、どう考えても、『実に良く撮れているな』という氷河の言葉を無邪気に期待している風情。 その証拠に、瞬は、写真だけでなく、センターテーブルの上に丸めて置いてあったB全判のポスターを、既に泡吹き状態だった氷河の目の前にばっと勢い良く広げてみせたのである。瞬の瞳は誇らしげに輝き、その動作に悪びれた様子はなく、ただ一瞬の躊躇もなかった。 |