はずだった。 ミロが移動の為に転送魔法の魔方陣を出そうとするところまでは特筆するまでのことはなにもなかったのである。 しかしながら次の瞬間その場の全員が身体に振動を感じていた。 「なんだ?」 「地震じゃないのか?」と、ミロ。 「まさかっ。ここはシベリアだ。」氷河が答える。 そう、火山がほとんど無く安定地塊に程近いこの地は皆無という訳ではないが 地震はない。しかし、 「これは間違い無く地震ですよ!!」 地震大国、日本育ちの瞬にはよくわかる。 「しかし長いな。」 「ええ、それにだんだん強くなってきているような、、」 縦揺れが次第に強まっていき、立っていることさえ辛くなってきていた。 ―地の底に引きずり込まれるような気分だ。― 「氷河っ! 落ちてる。」 ―なにっ!?― 瞬の声に我に返ると確かに氷河の立っている辺りの地面が陥没し始めていた。 動こうにも立っているのもやっとの状態である。 「氷河、僕に掴まって。」 上方から瞬の手が白い光と共に氷河のところまで降りてくる。 氷河は軽い目眩を覚えながら無心でその手に縋りついた。 まず触れたのは指先、そして手の甲。しっかりと握り締める。 「そのまま、いま引き上げるから。」 きっと近くにはミロとカミュもいるのだろう。ならば安心だ。と体重を預けかけたその時、 ― !!? ― 足元が一気に抜けて氷河の身体は落下した。あまり突然の事に瞬も引きずり込んでしまう。しっかりと握っていた手があだとなってしまった。 「うわああぁ――――――――!!」 「瞬っ しゅーん――――――!!」 次第に遠くなってゆくミロの声を薄れゆく意識の中で聞いた氷河は思った。 ―オレはどうでもいいんかい!― そして彼の意識も途絶えていった。 |