人には本来死に場所を選ぶ自由など、与えられてはいない。
 故に僕が歪めたものは運命。
 人としての運命。
 仕方ない。それは受容できぬ方向のものを指し示していたのだから。
 彼を喪う自分、という。
 そのような運命が訪れるのをどうして自分の玄関で待たなければならないのか。
 馬鹿馬鹿しい。
 死に場所を自分で選ぶなどという前向きな誓いをまもったわけなどでは決してない。
 そんなもの本来どうでもよかった。
 何処で死んでもかまわない。
 ただ何れにしても君がいなければ死ねないだろうと思っていた。
 僕はただ素直に僕の墓守を護っただけだ。


 勿論このようなものを愛と呼ぶべきではない。
 君は間違えるかも知れないから、はっきりと言っておこう。
 存在したのは愛ではなくて抗いようのない欲望。
 ただそれだけのこと。


 僕は過去から現在に至るまで、誰も愛しはしなかった。
 現実にそうであったのか、そんなことはどうでもいい。
 ただ僕がそう信じているということだけが肝要で、そうであってもなくても本当のところどちらでもいい。
 ただひとつ言うなら。
 君を真実愛していたならば、僕は決して君のために死んだりしないだろう。

 だって僕は知っている。
 一番苦しいのは、喪い残されることだと。
 身を以て知っているのだから。

 真実愛していたのなら君をそんな目には遭わせない。
 ───きっと。






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