朝。目を覚ますと今日も瞬はいなかった。
 氷河はためいきをつき、ふたりのものであるはずの、しかし自分しか眠らないベッドから起きあがった。
 もともとここにいるのは瞬が聖域の見張りを命じられたから、だったので。その瞬が自分を必要としないのであれば氷河には何もすることがないのだった。
 瞬は近頃しきりに自分に日本に帰れと言う。
 つめたい瞳をして。
 ここへ来るときに、一緒に行こうと言ってくれた瞬。
 なのに何故。
 誕生日の次の日からだった。瞬がおかしくなったのは。
 雨の中飛び出していって、それきり。
 あの瞬は帰ってこなかった。
 花の様に笑う、春の陽ざしにも似た優しげなその表情。目が合えば必ずその笑顔を見せてくれた───太陽のような。
 あの、瞬は。
 何処に行ってしまったのか。






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