「瞬王子。王子は、俺が強大な国の皇帝の娘だから、俺を好きになったのか?」 「え?」 「俺が皇帝の娘でなかったら、瞬王子は俺を好きにはなってはくれなかったのか」 「そ…そんなことありません! 氷河姫がお姫様でなくたって、平民の娘さんだっ たって、ううん、奴隷だったとしても、僕は氷河姫のこと好きになっていたと思います …!」 それは、瞬王子の言質を取るために、氷河姫が仕組んだ罠でした。 瞬王子は、氷河姫の身分など気にかけないということを言っているのですが、氷河姫は瞬王子に『娘でなくてもいい』と言わせるために、そう尋ねたのです。 氷河姫にはわかっていました。 ぬぼ〜っと待っていたら向こうからやってきてくれた憧れの王子様。 これは努力の末に得た成果でも何でもない、ただの幸運です。 人間は、もしかしたら、長い人生を過ごす間に幾度かは、そんなふうな“降って湧いた幸運”“棚からボタモチ”に巡り合うことがあるのかもしれません。 大事なのは、それを逃がさないこと。 その幸運を本当に自分のものにするための努力を怠らないことなのです。 この幸運を逃がさないために、どんなことでも――それこそ、どんな苦労でもどんな努力でもしていこうと、氷河姫は決意しました。 この可愛い王子様にはそれだけの価値があると、氷河姫は思ったのです。 |