ある日のこと。


ひょうがねこは、 しゅんねこが がけのしたに きずだらけで たおれているのを みつけました。

しゅんねこは、手に 小さな 白い お花を にぎりしめていました。


しゅんねこは かけよってきた ひょうがねこに かすかな声で 言いました。

「ぼくは ひょうがねこに たくさん しあわせにしてもらったから、 ぼくも ひょうがねこを しあわせに してあげたかったの。 がけの上に きれいな お花が さいていたの。 お花を ひょうがねこに あげたかったの。 ひょうがねこに あげて 『ありがとう』って 言いたかったの」

しゅんねこの そばに いることが ひょうがねこの しあわせでした。

「ねえ、 ひょうがねこの 心みたいに きれいな お花でしょう? ひょうがねこに あげたかったの。 ひょうがねこの おかげで ぼくは たくさん しあわせになれたから」

「そんなこと しなくても、おれは おまえが いてくれるだけで しあわせだったのに!」

ひょうがねこは 気が くるってしまいそうでした。
ひょうがねこの たいせつな かわいい しゅんねこが もうすぐ 死んでしまうのです。

「ひょうがねこ。 ぼく、 ひょうがねこを しあわせに できていたの?」

「あたりまえじゃないか!」

ひょうがねこの さけび声を 聞いて、 しゅんねこは しあわせそうに ほほえみました。


「それなら、 ぼくも しあわせだよ」


しゅんねこは そう言うと、 それきり うごかなくなりました。






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