瞬は可愛かった。
華奢で折れそうな肢体は、だが、しなやかで、決して折れたりはしない。
内部は熱く、情熱的で、いつも俺を待ち焦がれていてくれた。

俺を命を懸けて守ってくれたのは、弱々しくも見える身体と対照的な激しさなのだと、身体を交えるたびに、瞬は俺に教えてくれた。


果てるたびに、瞬の息が整うのを待って、瞬の身体を抱きしめた。
そうせずにいられなかった。


氷の海に沈んでいるあの女性以上に俺を愛してくれる人間などいないと思っていた。
だが、俺は瞬に出会った。
しかも、瞬は生きている。
生きていて、抱きしめることができる。



俺が求めていたのは、そういうこと――だった。
愛され守られることではなく、俺に向けられた愛と強さに感謝することでもなく――俺自身が愛すること。
愛し返すこと。

死んだ者を愛することではなく、死んだ者に感謝することでもなく――そんな無意味なことではなくて――生きている者を抱きしめること。



俺は、瞬のためにならどんなことでもするだろう。





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