神を名乗るものとの同居は、さほど不快なことではなかった。
それを、自然なことのようにさえ、僕は感じていた――まるで、最初から、僕の中には“彼”が存在していたように。

そうだったんだろうか?
最初から“彼”は僕の中にいたんだろうか?
“彼”が、僕の身体と声を使って氷河を誘惑したことは、以前から僕の中にあった願望だったんだろうか?


違う。
僕は、命を賭して母親に救われた氷河を――それほどに誰かに愛された氷河を羨んではいたけど、こんな関係になることを望んではいなかった、はずだった。


だけど、不快じゃない。
むしろ――そう、幸福、だった。

慈しむような言葉を囁かれ、氷河に抱きしめられるのは心地良い。
優しい愛撫が、獣の貪欲に豹変する様も愛しかった。


これが、“彼”の言っていた、僕の心の器が持つ力なんだろうか?
人と交わることを心地良いと思い、相手にもそう思わせられることが?

そんなはずはない。
こんなことは――『こんなこと』と言ってしまうには、あまりにその行為は甘美に過ぎたけど――こんなことは、僕でなくても誰もが知っている歓喜のはずだ。





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