相変わらず、氷河はいつも瞬を見ていた。
そして、瞬の心臓には穏やかに活動している時間が与えられなくなった。

氷河はどうやって決めたのだろう――と、思う。
彼の“特別な”人を。

(どうして、僕をその人だって思えたんだろう……?)

氷河だけではなく――ただの一瞬でも、誰かを自分の“特別な”存在だと思うことのできる人間たちの気持ちが、瞬にはわからなかった。
その謎の答えを考え始めると、眠れなくなる。

しかも、唯一、ひとりで落ち着けるはずの夜の闇の中にも、氷河の視線は忍び込んでくる。


『瞬、俺はおまえが好きなんだ』

氷河に抱きしめられる夢が、瞬の深い眠りを妨げた。

(氷河があんなこと言うから……!)

瞬は、毎朝、目覚めるたびに、自分でも理不尽だとわかっている氷河への怒りに支配されるようになってしまったのである。

怒りと――少しばかりの羞恥に。





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