水晶の花 ◇◇






もう何百年も昔の、北の国での出来事です。


都から遠く離れた小さな村に、ヒョウガという、我儘な青年が一人で暮らしていました。

我儘な青年だって、心を持った人間です。
恋をします。
ヒョウガが恋したのは、同じ村に住んでいるシュンという、大層心の優しい子でした。

シュンはとても可愛くて、誰にでも親切な子でしたので、村中の人たちがシュンを大好きでした。
けれど、ヒョウガの方は、なにしろ人付き合いが苦手で、まだ若いのに、まるで老人のように偏屈でしたから、村人たちから敬遠され、村の中でも孤立しているような状態でした。

でも、シュンは、そんなヒョウガにも、いつだって、他の村人たちと分け隔てすることなく優しく微笑んでくれました。

ヒョウガがシュンを大好きになるのも、当然のことだったのです。





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