もう何百年も昔の、北の国での出来事です。 都から遠く離れた小さな村に、ヒョウガという、我儘な青年が一人で暮らしていました。 我儘な青年だって、心を持った人間です。 恋をします。 ヒョウガが恋したのは、同じ村に住んでいるシュンという、大層心の優しい子でした。 シュンはとても可愛くて、誰にでも親切な子でしたので、村中の人たちがシュンを大好きでした。 けれど、ヒョウガの方は、なにしろ人付き合いが苦手で、まだ若いのに、まるで老人のように偏屈でしたから、村人たちから敬遠され、村の中でも孤立しているような状態でした。 でも、シュンは、そんなヒョウガにも、いつだって、他の村人たちと分け隔てすることなく優しく微笑んでくれました。 ヒョウガがシュンを大好きになるのも、当然のことだったのです。 |