「瞬……?」 氷河は、瞬のそういう反応は予期していなかったらしい。 彼が期待していたのは、美しい舞に感動した瞬の感嘆の溜め息だったのである。 ――恐ろしいことに。 「や……やめて! きゅ……求愛の舞って、そんな、ばっさばっさって、だって、何それ、やだ、やめて……!」 思いもよらない瞬の大爆笑。 だが、氷河は、そんなことはどうでもよかったのである。 瞬が――何をしても、どんなに懇願しても笑顔を見せてくれなかった瞬が――今、彼の目の前で屈託なく笑い崩れているのだ。 「笑った……!」 氷河は叫んでいた。 瞬は、笑いが止まらなかった。 熱望し続けていたものをついに手に入れた氷河の喜びは、尋常のものではなかったらしい。 瞬の明るい笑い声が嬉しくてならなかったのか、氷河は繰り返し求愛の舞を踊り続け、瞬の爆笑もまた、いつまでも止むことはなかった。 瞬は、しまいには笑い過ぎで腹筋が痛みだしていたのだが、それでも、どうしても、瞬は笑い止むことができなかったのである。 氷河の求愛ダンスは、拷問に近い力を備えていた。 |