「もちろん、今のままでも生きていくのに支障はないんですが――。対応策としては、瞬に男女どちらかの性を選んでもらって、その性に一致するように外性器の形成手術か性腺摘除術を行う――ということになると思います。ただ、瞬の染色体や内性器はあくまで女性のものだから、男性でいることを選んだ場合、瞬からは生殖能力が失われることになるわね」

「瞬が女の子?」

星矢の顔は、ほとんど死んだ金魚だった。
ぽかんと口を開け、瞬きもない。

星矢とて、幼い頃から、瞬を女のようだとからかったことはあったし、口にせずとも、そう思ったことは幾度もある。
しかし、それは、瞬が男だと知っているからこそのからかいであり、私見だったのだ。


「女性になることを選べば、瞬は子供が産めるようになるということですか」
「ええ、それは大丈夫。私は、だから、瞬には女性として生きていくことを勧めるつもりよ」
沙織が、冗談の色の全く無い口調で、紫龍に答える。

瞬の仲間たちと兄は、そんなことをあっさりと言ってのける沙織に、ひたすら唖然とするばかりだった。





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