沙織が何を考えているのか、まるでわからない――と、星矢たちは今更ながらなことを、今更ながらに思っていた。 瞬の仲間たちと瞬の兄の思いが複雑に交錯する中、沙織は突然言い出したのである。 「で、舞踏会を開こうと思うの」 ――と。 「舞踏会?」 そろそろ紫龍も、彼女の相手をするのには疲れを感じ始めていた。 しかし、沙織は、傍迷惑なほどに元気いっぱいである。 「そうよ。シンデレラ姫や白鳥の湖の昔から、たくさんの候補者の中から結婚相手を探すのは、舞踏会でと相場が決まっているわ」 「探すのは王子の方でしょう」 「王子さまもお姫様も同じことよ。来週、瞬のお相手を選ぶための舞踏会を、この屋敷で開きます。全員ブラックタイ着用のこと。せいぜい着飾って、お姫様のお気に召すように頑張りなさい」 それは既に決定事項であり、青銅聖闘士ごときには――黄金聖闘士たちでも同じことだったろうが――口出しが許されることではないようだった。 「瞬とのラストダンスを勝ち取るのは、いったい誰になるのかしら。楽しみだわ〜」 「沙織さん〜。俺、フォークダンスしか踊れないー! 不利だーっ!」 「あら、星矢。最初から諦めるの? でも、そうしたら、瞬とタイマン勝負よ」 「う……」 星矢の泣き言を、沙織は、にっこり笑って却下した。 |