「他の絵の中から、おまえの姿が消えたそうだ。持ち主たちは、気が狂ったように、おまえを捜しているらしい」 「…………」 その夜、氷河は、普段よりはるかに乱暴に激しく瞬を求めてから、身体を動かすのも辛そうにしている瞬の肩を掴みあげるようにして、瞬を詰問した。 「おまえは、もしかしたら、俺とこうしているように、そいつらも誘惑したのか? 寝たのか?」 絵の不思議など、どうでもよかった。 氷河を突き動かしているのは、強い妬心だった。 「氷河……」 氷河の険しい表情に触れた瞬が、辛そうな目を氷河に向けてくる。 「そうなのか?」 「いいえ」 「だが、奴等はおまえに執着して、おまえを捜しだせと――」 「いいえ……!」 最初は悲しげだった瞬の口調が、氷河に責められているうちに、少しばかりきつくなる。 「彼等は鑑賞用の僕を求めてるだけです……!」 「なぜそう言い切れる。俺がおまえに恋したように、彼等もおまえに恋したのかもしれないじゃないか」 「そうだったとしても! 僕が実体として姿を見せたのは氷河だけです! 僕が好きになったのも氷河だけです!」 「…………」 きっぱりと断言する瞬に、氷河が言葉を失う。 氷河の無言を不信の表れととったのか、瞬は唇を噛み、 「信じてもらえないのなら、もう来ません」 とまで言い出した。 氷河は、瞬の剣幕に少し慌てて――そして、苦笑して――やがて、嬉しそうに顔をほころばせた。 「瞬、違う。おまえに好きだと言われて驚いて――いや、浮かれてるんだ、俺は」 それを確かめられれば、他に知りたいことなどない。 氷河は、もう一度、花の身体を抱きしめた。 |