だが、ある日、氷河は気付いてしまったのである。

真昼の陽光の中で見る、緑の絵の中の瞬。
白い着衣から覗く細い首、白い指、ほのかに新緑に染まっている剥きだしの腕。

それらのどこにも、氷河のつけた愛撫やキスの跡、力を入れて押さえつけたせいで残ってしまった痣が映っていないことに。

何よりも、絵の中の瞬の眼差しは、氷河が彼に初めて出会った時のまま――恋を知らない無垢な少年のままだった。
毎夜氷河に向けられる、控えめでいて情熱的な恋人のそれではない。


そう思い至った途端に、氷河は、夢に出口があることに気付いてしまったのである。






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