「シュンは普段、どんなふうに過ごしているんだ」 ヒュペルボレオイの国に次ぐほどに広大な領地を持ち、神々の覚えもめでたいエチオピアの国の王の一族の一人だというのに、シュンの部屋はさほど豪奢なものではありませんでした。 黄金や宝石を使った装飾品などは一つもなく、むしろ、簡素と言って差し支えないようなものでした。 けれど、さすがに品は良く、部屋の帳や腰掛けの覆いには純白のサテンや絹が使われています。 その長椅子の一つに腰をおろし、ヒョウガはシュンに尋ねました。 「え……と、勉強したり、薬草を摘みに出たり、街の病院に慰問に行ったり――」 シュンの答えを聞いて、ヒョウガは軽く頷きます。 「なら、俺は、おまえの教師になってやろう。外出の際にはおまえを警護し、食事の時には給仕をし、夜にはおまえの寝台の足元で、おまえの眠りを守る」 いつの間にか『君』は『おまえ』になっていましたが、シュンもその方が気が楽でした。 呼び方に関しては、それで構わなかったのですが。 「でも、あなたは王様なのに……」 「ヒョウガだ」 「え?」 「『あなた』ではなく、ヒョウガと呼べ……呼んでくれ」 「あ、はい、ヒョウガ……?」 シュンに名を呼ばれると、ヒョウガは初めて、とても嬉しそうに微笑しました。 そうして、その日から、ヒョウガはその言葉通りに、シュンに仕えることになったのです。 彼は、言葉使いからはどうしても尊大さが抜けませんでしたが、にわか奴隷になった一国の王としては申し分のない気配りをもって、シュンに接してくれました。 シュンは、ですから、日々をヒョウガと過ごすうちに、徐々に彼に好意を抱くようになっていったのです。 |