実は、ヒョウガがエチオピアの王宮にやってきたのは、不敬の罪を犯したからでも、デルポイの神託があったからでもありませんでした。
彼自身が、大神ゼウスを脅して、そうするように仕向けたのです。

しかも、その脅しのネタは、自身に流れるゼウスの血をヘラに知らせてもいいのかという、自分の出自を逆手にとったものでした。

彼がそんな脅迫をするに至った理由も、シュンの尊敬を受けるような類のことではなく――ヒョウガは、オリュンポスの神殿で、エチオピア王と共に神々の宴に招かれていたシュンの姿を見かけた時から、シュンを自分のものにしたいという、抑えがたい願望を抱いていたのです。

そんなことも知らずに、自分の口にした出まかせを素直な瞳で信じ込んでしまったシュンに、ヒョウガは罪悪感を覚え始めていました。






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