「一人でいるのが寂しいのなら、一輝や星矢を呼んでやろうか」

リビングのソファに移動して、僕が少し落ち着きを取り戻すと、氷河はふいにそんなことを言い出した。
僕の真意を探るように。
そして、ひどく辛そうな声音で。

僕は、即座に首を振った。
「子供じゃないんだから平気」

そうしたら――僕と氷河以外の誰かがここに来たら――、今のふたりの生活に終止符が打たれることが、僕にはわかっていた。

「夕べは、側にいてくれると思ってた氷河がいなくて、だから不安になっただけ。いなくなっても帰ってきてくれるって教えておいてもらえるのなら平気」
「…………」

僕は無理をしてそう言っているのだと、氷河は思ったのかもしれない。
僕の答えに、氷河は沈黙だけを返してよこした。

僕はまた泣きたい気分になって――ううん、ほとんど泣きべそをかきながら、氷河に尋ねた。

「氷河は、僕といるのが嫌になったの……」
「そんなことがあるはずないだろう!」

氷河の返答は怒声だった。
ちっとも優しくない、久し振りに聞く氷河の怒鳴り声。

でも、僕は嬉しかった。

「よかった……」

僕がそう呟くと、氷河はまた黙り込んでしまった。






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