ガラスのようなもので傷をつけられた僕の目は、角膜損傷と緑内障を起こしていたらしい。
眼内異物を取り除き、簡単な手術を受けると、気が抜けるほどあっさりと、僕は視力を取り戻した。

死んだと思っていた僕から連絡が入った時、沙織さんはパニックを起こしてしまったらしい。
狂喜して、彼女は、僕のために最高の眼科医を手配してくれた。

僕はただ、あのまま、あそこで飢えて死んでしまったら、もう氷河に会えない――と、そう考えて仕方なく城戸邸に連絡を入れただけだったんだけど。
沙織さんや星矢たちの喜ぶ様を見、兄さんに叱られて、僕は、自分がいろんな意味で盲目になっていたことを思い知らされた。

僕が氷河と暮らしていたあの家は、ごく普通のマンションで、なんと階下の部屋では他の住人たちが、何も知らずに日常の生活を営んでいた。


それから。
目の見えない僕は気付かずにいたんだけど、あの部屋には、氷河からの手紙が残されていたらしい。

手紙。
古風な連絡法だ。
もし、沙織さんに連絡を入れる前にその存在に気付いていたら、それに何が書かれているのかが気になって、僕は結局、外の誰かを頼っていたに違いない。

沙織さんに強制入院させられてから1週間後、僕は、意外に達筆な氷河の手紙を、自分の目で読むことができた。






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