Dies Natalis Invicti






多分、俺は傲慢で、そして、おまえに甘えていた。

俺はおまえを支配しているつもりでいた。
おまえよりも強いつもりでいた。
それはただの錯覚で、本当のところは、おまえが寛大なだけだったのに。

おまえがいなくなっただけで、これだけ取り乱す俺のどこが“強い”んだ。
俺は、どうして、そんな錯覚を信じていられたんだろう。

俺は、おまえがいないと生きていられない
恐ろしい夢に怯える子供のように、おまえがいないと一人では眠ることもできない。
俺は、おまえの身体の中に逃げ込み、潜り込み、おまえの温もりの中でしか眠れない、図体だけがデカい子供のようなものだったのに。

俺の下でおまえを翻弄して、俺はいい気になっていた。
俺こそがおまえを支配しているのだと。

息も絶えそうなほど激しく喘ぎ、その瞳から涙を零し、『もう許して』と懇願するおまえ。
そんなことを訴えながら、結局は俺を悦ばせるために蠢き始めるおまえの中。

俺がおまえをそんなふうにした。
だから、俺は、自分を、おまえを作った創造神か何かみたいに思っていたんだ。
おまえを、俺の思い通りになる綺麗な人形か何かのように思い込んでいた。


馬鹿だったと思う。

おまえが俺の前から姿を消しただけで、俺はこんなに気が狂いそうになる。
こんなデミウルゴスがあるものか。

いったい誰が、俺からおまえを奪おうとしているんだ。
傲慢だった俺自身か。

おまえをこの手に取り戻すためになら、俺は、俺自身を消し去っても構わない。




──俺は、夜の街をひたすらに、当てもなく闇雲に、俺の前から消えてしまった瞬を求めて走り回った。






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