下の階にいる神官たちに、シュンの声は聞こえているはずだった。 夜には誰も近付くことの許されていない静寂の神殿に、他に声を発するものはないのだから。 だが、救いは来なかった。 異変が起きていることには、彼等も気付いているはずである。 だが、おそらく、あの形式だけを重んじる神官たちは、塔の部屋に入ることは誰にも許されないという決まりの遵守にだけ腐心しているに違いなかった。 「ヒョウガ……助け……」 救いは来ない。 シュンがこんな目に合っているのに、ヒョウガですら、そこに駆けつけてきてはくれなかった。 闇の中の神が精を放ち、シュンの中に熱いものを残して離れていく。 荒ぶる息が、彼の生きていることをシュンに知らせ、それは普通の人間と何ら変わったところのない生き物のように、シュンには思われた。 本当に、これが神の仕業なのだろうか──と、シュンは泣き叫びたい衝動にかられた。 シュンの視界に、ふいに、シュンが眠りに落ちた時には開いていた窓が映る。 あの窓から、月の光を、せめて星影だけでも、部屋の中に招じ入れて、この荒々しい獣が本当に神なのかどうかを確かめたい。 (窓を──) 痛む身体を押して、シュンは自身の右腕を窓の方へと伸ばした。 届くはずがないことがわかっていても、シュンはそうせずにはいられなかった。 途端に、シュンは、闇の獣に寝台の中央に引き戻され、再び貫かれた。 「や……やだ、もうやめて……」 シュンの懇願は、当然のごとく無視された。 乱暴な接合のために、その部分が麻痺しかけていたせいもあって、シュンは二度目には、最初の時ほどの衝撃は受けなかった。 だが、それは、シュンの中から、彼の意思を奪い取るには十分の力を持っていて、実際、シュンはそれ以降は彼への反抗心も懇願もない人形のようなものになってしまったのである。 |