“神”に身体を揺さぶられながら、脳裡に、懐かしい友人の顔を思い描く。

そして、シュンはぼんやりと、これがもし、見知らぬ神などではなく、得体の知れない闇などでなく、ヒョウガだったなら、自分はこの暴力を許していただろうか? と考えた。
許していたかもしれない──。
そう、シュンは思った。

だが、今──今更──そんなことを考えても、それは詮無い例え話にすぎない。
彼の所有に帰した城の奥で、ヒョウガは今頃、シュンの身に起きていることも知らずに眠っているか、あるいは、また何か難しい考え事をしているに違いないのだ。

(ヒョウガ……)

シュンの涙は、既に涸れつつあった。
ヒョウガでないのなら、せめて本当に神であってくれと、シュンは、自分の身体を貫いて嬉々としている獣に向かって、悲しく祈った。






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