ヒョウガは、無事に彼の城に帰還した。
遠征は、人的な損害は皆無に等しく、降伏したイスラエル人たちも、彼等の新しい支配者に総じて従順だった。
そして、バビロンの都の住人たちは、その勝利に酔い、降りそそぐ花と歓呼で、彼等の王を迎えたのである。


王も遠征の結果には満足しているのだろうと、誰もが思っていた。
王と対立している神殿の神官たちですら、王の凱旋を喜び、これで王が少しは慢心し、神殿への敵愾心を緩めてくれるのではないかと期待していた。


しかし――。
バビロンの都に帰ってきたヒョウガが最初にしたこと。
それは、神殿の主だった神官たちを捕え、城の石牢に幽閉することだったのである。

当然のこととして、城中の者たち、神殿の下級の神官たちは、王の心境にいかなる変化が生じたのかと、慌て、怖れることになった。
それまで、ヒョウガは、神殿側との対立の態度は明確にしながらも、決して表立った攻撃や排斥には及ばなかった。
だというのに、王は、捕えた神官たちを拷問さえしていると言う。

シュンが“神”によって傷付けられた時、親身になってその世話をしてくれたあの少女をも──仮にも、一度は神の配偶者だった者をも──ヒョウガは捕らえ、尋問してのけたのだった。






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