「瞬、大丈夫か?」
「星矢……。あ、僕、何だか変な夢を……」

瞬が意識を取り戻したのは、城戸邸のラウンジの長椅子の上だった。
瞬が、なぜ自分が気絶などする羽目に陥ったのかを想い出せていない様子で――おそらくは、思い出したくないだけなのだろうが――、心配そうに仲間の顔を覗き込んでいる星矢を、ぼんやりと視界に映す。

「夢……かぁ」
困ったようにぼやく星矢の肩に、トンボが一匹とまっている。

瞬は、数年振りに間近に見るその物体から、視線を逸らすことができなかった。

「あ、おい、瞬。大丈夫か?」

瞬は、目を見開いたまま、再び気絶していた。






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