希望を見い出しかけていた人間がそれを否定された時、否定された人間はどういう反応を示すものだろう。
落胆し打ちひしがれるのが、普通なのかもしれない。

しかし、その時、ヒョウガの“絶望”は、怒りという形で現れた。
シュンに悪意や罪悪感が全くないことが――何の意図も感慨もないことが――むしろ、ヒョウガの怒りを大きくしていた。


自分自身の怒りをヒョウガが自覚した時には既に、彼は、その場にシュンをなぎ倒していた。
シュンが身に着けていた白いブラウスは、ヒョウガの手であっさりと引き裂かれ、その胸はすぐに、ヒョウガの視線と唇に蹂躙されることになった。

ヒョウガの愛撫ではなく、ヒョウガの怒りに驚いて激しく波打っているシュンの心臓をいらうのを、しかし、ヒョウガは早々に切りあげた。
そんなことは、怒りを静めることに、何の力も持っていなかった。

「ヒョウガ……?」

冷たい床の上で、自分が何をされているのかわかっていないらしいシュンの下半身を露わにさせる。
そして、ヒョウガはそのまま、一瞬のためらいもなく、一気にシュンを貫いた。

希望と絶望の交錯する絵の下で、シュンが、声のない悲鳴を響かせる。
引き裂かれる苦痛から逃れようとして、シュンはその手でヒョウガの肩を押しやろうとした。
ヒョウガの力の前に、それが叶わないと知ると、シュンは今度は、涙ながらにヒョウガに解放を懇願してきた。

が、その懇願の言葉とは裏腹に、シュンの身体は、ヒョウガをしっかりとくわえ込み、包み込み、放そうとしない。
シュンのその熱く柔らかく、それでいて強い感覚に捕らわれて陶然となったヒョウガに、シュンの悲鳴は聞こえていなかった。
ヒョウガは夢中になって抜き差しを繰り返し、シュンを揺さぶり続けた。


既に喘ぐことしかできなくなっていたシュンが、やがて抵抗を諦める。
ヒョウガの下で、シュンは瞳を見開いていたが、彼がその視界に何かを映しているようには見えなかった。
その頃にはもう、シュンは、自らの意思と意識を手放してしまっていた。
ただ、ヒョウガを受けとめている部分だけが、シュンの意思とは別の命を持っているかのように、熱く蠢いている。

そのために、ヒョウガは、自身の憤りをシュンの中に吐き出し終えるその時まで、シュンが気を失ってしまっていることに気付かなかった。






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