朝の10時。 朝食には遅く、昼食にはまだ間のある時刻。 城戸邸のキッチンにある冷蔵庫を、ごそごそとあさっている不審な男がひとりいた。 「何してるんだ、おまえ」 「冷蔵庫に頭を突っ込んで、日光浴をする人間もいないだろう」 不審な金髪男が、答えになっていない答えを星矢に返してよこす。 最近よく見かけるようになったこの光景に、星矢は遠慮会釈なく顔を歪めた。 城戸邸に起居している聖闘士たちの食事は、そのために雇われている調理師が毎食準備してくれている。 カロリーや栄養バランスが考慮された食事を規則正しく三度三度、聖闘士たちは提供されているのだ。 無論、今朝も定刻の7時には、いつもの通りに朝食の準備が整っていた。 ただ、その食卓についたのは星矢と紫龍のふたりだけ。 氷河と瞬の姿はいつまで経っても朝の食卓に現れず、二人のために用意された食事は手をつけられないまま片付けられた──星矢の腹の中に。 「若い人には敵いませんねぇ」 氷河と瞬の分の食器を片付けながら、苦笑混じりにそう言ったメイド頭の老嬢が、星矢の食欲のことを言ったのか、氷河と瞬のお盛んなことを言ったのか、それは、言われた星矢当人にもわからなかった。 |