他に住む者もない孤島で、父親と二人だけで暮らしているという少年は、どんなふうに育っているのだろうと、考え続けてはいた。
瞬の伸びやかな肢体、澄んだ瞳、人を疑うことを知らない純粋さは、確かに人を惹きつけるものだろう。
だが、そういう感情や欲望の対象にするにしては、瞬はあまりに幼すぎる。

俺は、俺自身に必死にそう言い聞かせ、身の内に湧き起こってくるものを否定し、抑えつけようとした。
だが、俺が必死に自身を牽制する脇で、別の考えが俺をそそのかしてくるのだ。

――瞬は綺麗で素直な心を持っていて、俺を慕ってくれている。
瞬は可愛らしい。
庇護欲をそそる。
守ってやりたいと思う。
瞬は、嫌がりはしないだろう。
『これは、悪いことではないのだ』と教え込めば。
そして、責任を持って一生面倒を見てやれば、瞬はおそらく幸せなまま、それを当然のこととして受け入れ、俺だけを見詰めて、彼の人生を生きていくことになるに違いない――と。

「瞬」
自分にそう言い訳をして、瞬の背に腕をまわしながら、俺は心の底ではわかっていた。

これは、瞬を侮辱する行為だ──と。
俺は、瞬の無知を利用して、瞬の身体と人生とを自分のものにしようとしているのだと。

わかってはいた。
わかってはいたのだが、一度俺の中に生まれた“それ”は、一向に消え去る気配を見せなかった。
“それ”は、こんな目に毒な格好で走りまわり、誘うようにじゃれついてきておいて、それを拒む権利が瞬にあるだろうかという考えをさえ、俺の中に形作り始めていた。






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