「何ぃ !? 」
「へ…… !? 」
「ほう……」

上から順に、アポロン、星矢、紫龍。
彼等が驚いたのは、当然のことである。
が、あまりにもあっさりと目当てのものを捜し当てた氷河に、その場で最も驚いていたのは、実は、氷河のおかげで元の姿に戻ることのできた瞬当人だった。

「氷河、どうして……?」
「ふへ〜。おんなじ花が1000株もあったのに、何でわかるんだよ?」

仲間たちに尋ねられた氷河が、わざとらしくも勿体ぶって答える。
「それはもちろん、花の形、大きさ、色、花びらの艶、茎の弾力性、葉の角度等から、総合的に判断してだな」
「花の品評会じゃあるまいし……。真面目に答えろよな。どれもおんなじだったじゃないかよ」
「ま、愛の力というやつだな」

星矢の追求を無視してそう言うと、氷河は、あまりと言えばあまりなこの展開に呆然自失しているアポロンに向き直った。
「瞬は返してもらう。貴様は、とっとと(ねぐら)に帰って、劇場版用の新しい必殺技でも考えていた方が利口だぞ。俺を本気で怒らせる前にな」

瞬の本気は、星矢たちも知っているが、氷河の本気を、彼等はまだ知らなかった。
知りたくもなかった。

知ろうと思わない彼等は賢明である。
だが、非常に残念なことに、オリンポス12神の1柱であるところの光明神は、星矢たちの100分の1も賢明ではなかったのである。






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