「なあ、紫龍……。あの神サマ、なんか、ちょっとかわいそうじゃねー?」
もはや為す術なしといった様子で、その場に立ち尽くしているアポロンを、星矢が気の毒そうに見やる。

「今度の敵だ。同情は禁物だぞ、星矢」
紫龍は、そんな星矢を(一応)たしなめたのだが、それでも、星矢の憐憫の情は消えることがなかった。

「って、言ってもさあ……」
いずれ闘うことになる敵とはいえ、これが哀れまずにいられるだろうか。
たかが神ごときが、恋する氷河に太刀打ちできるはずがない。
常識的な人間なら誰もが知っていることを、この気の毒な神サマは、知らなかっただけなのだ。


『瞬は最強、氷河は無敵』。
テレビや映画で『聖闘士星矢』を一度でも見たことがある者なら、誰にでもわかるその事実。
普通程度の判断力を持つ人間なら、あえてこの・・氷河の敵にまわり、彼と真面目に闘おうなどとは考えないはずである。

その事実に思い至らず、この二人にちょっかいを出そうとする神サマ方の軽率さに、星矢は、哀れをもよおさずにいられなかった。
身の程を知らない神々に、星矢は、同情せずにはいられなかったのである。






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