閉じ込められた部屋の窓から、空ろな目でオリンポスの山々を眺めているだけの時間が過ぎていく。 暮れかけた神殿のどこかで聖火が燃やされているのか、窓の外から、炎の匂いと火のはぜる音が、瞬の許にまで運ばれてきた。 「そろそろ外の景色も見えなくなる。ここから逃げるのは諦めて、窓を閉じたらどうだ。君の脚では、半日歩いただけで、一歩も前に進めなくなるのが落ちだ」 ハーデスがその部屋にやってきた時、瞬はほとんど気力を失いかけていた。 彼の言葉が的を射ていることを認めざるを得ない自分が、ひどくみじめだった。 体力のことではない。 瞬の身体を動かなくするものは、すぐに諦めてしまおうとする心の弱さだった。 『そんなことで、あなたは人間たちとの交わりを諦めてしまうの?』 2年前、この場所で、瞬にそう告げたアテナの言葉を思い出す。 あの時も、瞬は、 そして、瞬は、今また、同じことを繰り返しているそうとしている──のだ。 |