朝になると、瞬は目覚める。
眠る氷河を見ているのが苦しくなり、時折、ひとりだけの空間の外に出てみる。

緑の庭と、青い空と、澄んだ風と、咲き乱れる花。
瞬は、それらのものを美しいと思う。
ここを氷河と歩めたら、どれほど幸福な思いを味わえるだろうかと。

だが、それらのものよりも、氷河の方が美しい。
豊かな自然よりも、氷河は瞬を惹きつける。

だから、瞬は、短い時間それらのものを愛でると、急いで氷河の許に戻るのだった。
氷河から離れている間に、彼に何かが起こってはいないかと、期待し、また、不安を覚えながら。

氷河はいつも何も変わっていない。
数刻前と同じように、氷河は眠っている。

見詰めているうちに日が暮れて、瞬は、彼の横に横たわり、目を閉じた。






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