白いばかりの極寒の地で、氷河が瞬を思い出すことはなかった。
瞬はどうせ死んでいる──。
あの泣き虫の子供に会うことはもうないのだ。
そう自分に言い聞かせて、氷河は決して瞬を思い出さなかった・・・・・・・・

もう瞬には会えない──そう思うと泣けてくる。
だから氷河は、意地でも瞬を思い出さなかった・・・・・・・・のである。



だが、氷河は瞬に再会した。
あの泣き虫だった瞬は、生きて──聖闘士になり、6年分の歳を重ねて、氷河の前に現れた。

聖衣を手に入れることができたのだから、瞬は強くなったはずだった。
だが、瞬は、相も変わらず、春先に咲く淡い色の花のような風情をしていた。
幼い頃、兄が側にいない時にいつもそうしていたように、気を張っているのがわかるほどに気を張って、瞬は氷河の前に立つ。
瞬は何も変わっていなかった。

一輝がこの場にいないという事実を言葉にすることさえ怖れているような瞬の様子は、氷河の目にはむしろ、6年前の瞬よりもろいものに見えさえしたのである。

星矢たちは、事あるごとに、そんな瞬を励ましていた。
「きっと一輝は帰ってくるさ、それまで頑張れよ」
「無理をして気を張っていると、限界を超えた時が大変だからな。俺たちの前でまで、元気な振りなんかしてなくていいんだぞ、瞬」

──6年が経ったのに、誰も変わっていなかった。
星矢も、紫龍も、そして、彼等の根拠のない慰めと励ましに頷いてみせる瞬も。






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